それでも君と、はじめての恋を
「じゃあ、結果だけ聞けたら満足なんだ? 葵がどうなろうと、葵が今どんな気持ちでいるかも、知ったことじゃないんでしょ」
『……』
「だったら今葵の様子気にする必要ないじゃん。それとも干渉しないって思ってたけど、やっぱり気になるってことなの?」
黙らないでほしい。黙られると肯定なんだと、無言の同意なんだと感じでしまう。
何か言い返してくるかと思って暫く待ってみたけれど、結局モモは一言も発しなかった。
――最悪、……最低。
言いたいことは言うモモが否定もせず黙るなんて、図星ってことじゃん。それならそれでいいけど。優しいと思ってたモモが実はこんなにも軽薄な人だった、それだけのこと。
「今更何って思うし、あたしも葵も純とモモに話すことなんてないから」
怒るのもバカらしくなってきたあたしは電話を終わらせようと、口早に告げる。すると受話口から携帯を持ちかえたような音が聞こえた。
『渉は、俺らが同じ考えじゃないことが気に食わない』
「……何それ。そんなこと言ってないじゃん」
『そう聞こえる。渉がどう思おうと自由だけど、それを押し付けられても困る』
「……は?」
『――いいや。じゃあね』
返事も聞かずにブツッと電話を切られて、繰り返される切断音は苛立ちを煽った。
「――なんっなの!」
手荒く携帯を閉じて近くにあった枕を部屋のドアに向かって投げても、余計にむしゃくしゃしてしまう。
何なの、いいやって何!? 最後まで言えよ!
同じ考えじゃないことが気に食わない!? モモと純はあたしと違う考えだってことなんか、最初から知ってたんだけど!
あたしが今怒ってるのは、気に食わないのは、葵を気遣う素振りも見せなかったくせに今になってアレコレ情報だけ聞いてこようとする態度じゃん!
それとも干渉はしないけど情報だけは欲しいっていうのがモモの考えだっていうの?
何だソレ。図々しいにもほどがある。ただの野次馬根性じゃん。根っから傍観者決め込んでるんじゃん。
だったらそれも気に食わないからモモが言ってることは当たってるんじゃないでしょうかねっ!
「ああもう訳分かんない! むっかつく!」
ベッドに投げだした体は怒りを持て余し、両手は力任せに布団を殴る。
何度も何度も拳を振り落としたって疲れるだけで、布団に顔を埋めたまま動くのをやめた。