それでも君と、はじめての恋を
……つまりモモは、あたしにはあたしの考えがあって、自分には自分の考えがあるって言いたいんだ。
押し付けたつもりなんかないけど、少しも理解しようとしないモモの方こそどうかと思う。
干渉する気はなかったから、七尋くんが浮気していたことを黙っていたなんて。あたしがどう思おうと自由だなんて。
葵が苦しんでたり悩んでたりしたら、モモは何も言葉を掛けないの? 目の前で泣かれたら、無視するの?
あたしが聞きたかったのはそういうことで、結局モモにとって葵は他人同然なのかもしれない。
モモにとって葵の存在がその程度なら、無理だ。そんなの、いくら話しても平行線のままで、分かりあえるわけがない。
あたしにとって葵は友達で、ずっと前から仲良くて、これからも一緒にいたいと思うんだから。
「……」
ごろん、と寝返りを打って天井を眺めるふたつの目は、すぐに腕で覆った。
――面倒くさい。考えるのも疲れた。
そう思うと、また携帯が着信を知らせる。
「――……」
記憶を頼りに手だけを伸ばして携帯を掴むと、相手も確認せずに電話に出た。
「はい……?」
『……なんか機嫌悪い?』
「……久坂さん?」
『えぇ? 誰だか分かんないまま出たの? ごめん、もしかして寝てた?』
「あー……いえ、寝てはなかったです。どうかしました?」
着信相手は久坂さんで、ベッドから体を起こしてる間に電話の向こうから『遊ぶぞーっ』と、ヨッシーの声が聞こえる。
『聞こえた? 葵ちゃんにはヨッシーが電話してダメだったんだけど、俺とヨッシーと、中番メンバー2~3人で。今から遊べる?』
時計を見ると、夜7時過ぎ。どうやら久坂さんもヨッシーも、今日はバイトが休みだったらしい。
「んー……」
『乗り気じゃなかったらいいよ』
「や、そういうわけじゃないんですけど……」
『……彼氏と喧嘩して不機嫌な感じ?』
するどい突っ込みに、再び胸や頭に靄がかかり始める。
「あーっもう考えるのやめたんです! 行きます! みんなと遊びます!」
言葉通り思考を遮断したあたしはベッドから立ち上がり、久坂さんと電話しながら家を出る準備を始めた。
学校が始まるまであと1週間と数日。
靄は晴れることなくその範囲を拡げ続け、停滞したまま。
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