それでも君と、はじめての恋を
「何て言うかさ、今何してる?とか、明日時間ある?って普通に連絡してくる七尋は、謝ったんだからもういいじゃんって感じなのかもしれないって思って」
「あー……うん、その気持ちは何となく分かる」
「でしょ!? ……てか、自分がこんな心狭いとは思わなかった」
「や、狭くはないでしょ」
好きだから寛大に許すってパターンもあるだろうけど、葵の中で浮気は簡単に許せることじゃないだけで、それだけ七尋くんのことを信じていたとか、好きなんだって思えばいいんじゃないのかな。
……でも、だからこそ不安になる。
あたしだって七尋くんの浮気は許せないけれど、葵は七尋くんが好きで、七尋くんも葵が好きだと言ってくれて、だったらもう一度仲良くやっていけるんじゃないかなって思う。
葵が望むなら、それでもいいって思える。
だけど葵は傷付いたから、七尋くんとの間に壁を作ってしまって。それを未だに壊せずに、乗り越えられずにいる。
急かしたいわけじゃない。でも、七尋くんがいつまでも壁の向こう側で待っている保証がない。
あたしはそれが不安なんだ。
葵が悩むのも迷うのも分かるけど、葵が再び何の構えもなしに七尋くんと向き合おうとした時、大好きな彼が目の前にいなかったらって思うと、怖い。
「なんか、謝ってくれて、好きだって言ってくれて、安心したけど……実際半年も浮気してたわけじゃん。これで終わりなの?って、どっかで思ってる」
「……うん。そうだよね」
――1度。たった1度浮気が発覚しただけで、あたしの中で七尋くんのイメージががらりと変わってしまった。
気の迷いで浮気したという七尋くんは、半年前から浮気を繰り返していたわけで。
謝ってはくれたけど、またふらりと葵以外の女の子の元へ向かうかもしれないって。いくら葵のことが好きでも、もう二度と浮気しないなんて言い切れない気がして。
信じ切れない。疑ってしまう。
あたしでさえそう感じるのだから、葵はもっと強く感じているはずなんだ。
そんな気持ちに勝つか、負けるか、引き分けるかは、葵が悩んで悩んで決めなくちゃいけない。
七尋くんがいつまでも待っている保証はない。だけど同時に、待っている可能性も0じゃない。
出来れば後者であってほしいけど、むしろ待っているべきだと思うけど、その時にならなければ分からないことにあたしが不安を感じても仕方ないのかもしれない。