それでも君と、はじめての恋を


――う、わ!


自販機が見える距離まで来たところで、あたしは目ざとく桃井くんを見つけてしまう。


自販機の前に立つ桃井くんは背が大きくて、髪色もピンクだからか目立っていた。


なんだろう……オーラがあるよね。まあちょっと黒いオーラなんだけど。


「桃井くんっ!」


小走りに駆け寄ると、ちょうど取り出し口に手を入れてた桃井くんは振り返った。その手には、コーラ。


「矢吹」


コーラ、好きなんだね。

そう出かけた言葉を、あたしはあっさり飲み込む。おまけに、目まで見開いてしまった。


今、なんて言った?

……矢吹って言った?


「名前! 覚えてくれたの!?」


あたしの勢いに、桃井くんは少しのけ反ってから頷く。


うわー! うわー! 嬉しい!


「桃井くんっ、コーラ好きなの?」


自分でも分かるほどの笑顔で聞くと、桃井くんは「多分」と答えた。
< 43 / 490 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop