それでも君と、はじめての恋を




一昨日食べた特大パフェは、本当に絶品だったと思う。


「――優木。ちょっといい?」


葵と行ったカフェに今度はみんなで行こうと、昼休みに女子5人で固まっているところへやってきたのは、森くんだった。


呼び出された葵は数秒森くんを見つめたあとあたしへ視線をよこして、すぐに腰を上げた。


「ごめん、話してるとこ」

「いいよ別に」


そんな会話を残し、葵と森くんは教室を出て行ってしまう。


……七尋くんのこと、かな。


「何なに。どういう組み合わせ?」
「ほら、森って葵の彼氏の弟じゃん」
「そういえばそうだったね」


友達の会話を聞きながら、画面いっぱいに特大パフェが映る携帯を閉じた。


そのまま壁に寄り掛かって椅子の背もたれに頬杖をつくと、「ていうか渉と葵さ」と言った友達に視線を移す。


「夏休み明けてから純と桃井寶と一緒にいなくない?」

「あーっうちも思ってた!」

「どしたの? 喧嘩?」

「やー……喧嘩ってほどのことじゃ……」


言い争って、そのまま放置って感じだよね……。そもそも、いいやって放り投げたのモモだし。


あたしも、またあの話題に付き合う気にはなれない。


「まあいいよ、あたしの話は」

「うわぁ渉、めんどくさそーっ」


その通りですけども。席も見事にバラけたからね。


1年生の時同様、あたしは廊下側の後ろから2番目の席になった。冬になるとどの席よりも寒いってこと以外、特に不便なことはない。


「あ、いた」


身近で聞こえた声に廊下を見ると、別のクラスの友達ふたりが窓から笑顔を見せる。


あたしに用があるんだとすぐに分かったのは、以前片方の子に佐野くんの友達を紹介したからだった。
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