それでも君と、はじめての恋を
「付き合ったよ!」
「え! マジで!?」
廊下に出ると、友達はあたしの両腕を掴んで興奮気味に揺らす。
「マジ! ほんとありがとーっ」
「いやいや、良かったね! おめでとう!」
いい感じだとは知っていたけど、いざ付き合ったと報告を受けると、ふたりを引き合わせた身でもあるから顔がほころぶ。
「このまま友達で終わるのかなーって思ってたんだけど、昨日告られて! もう超幸せっ! 超好き!」
「この子、朝からずっとこの調子なんだよー」
「いいじゃん、あたしも嬉しい!」
「渉のおかげーっ!」
そう言いながら抱き付いてくる友達のテンションの高さにつられて、廊下でキャッキャッと騒ぐ女子3人。
告白された時の詳細や、今度の休みにデートすることを満面の笑顔で話してくれる友達は、すごく可愛い。
あぁ、いいなぁ……。なんて思うほど女の子らしくて、幸せそうで、少し羨ましくなった。
「やーっ、ほんと良かった。また聞かせてね」
「うんっ! ……でさ、もう一個話あるんだ」
報告と惚気話を一通り聞いたあたしは首を傾げて、「何?」と聞き返す。すると、今度は付き添いだと思っていた友達が話し始めた。
「ほんと、出来たらでいいんだけどね? 紹介してほしい人がいるんだよね……」
「え? うん、いいけど……え? 誰っ!?」
今まで結構な人数を友達に紹介してきたあたしだけど、大抵おにぃや佐野くんの友達から合いそうな人を選ぶことが多い。
写メを見せたりして好みの人いる?なんて聞いたこともあったけど、最初から『紹介してほしい人』と指名されることはめずらしかった。
「多分、渉の友達だと思うんだけど……」
「多分って何! 誰っ?」
早く誰を紹介してほしいのか聞き出したいのに、友達はもじもじして言うのが照れ臭いらしい。痺れを切らしたのはあたしではなく、幸せオーラ全開の友達だった。
「うちら夏休みに何回かね、夜の11時くらい? 渉が男と歩いてんの見かけたんだけどさ。その人が超カッコイイって、この子ずっと騒いでて」
……夏休みで、夜11時くらい?
どのあたりで見掛けたのか聞くと、やっぱりバイト先の近くだった。