それでも君と、はじめての恋を


「じゃあ、いつも飲むのはコーラなんだね」

「……そうかも」


自販機にお札を入れながら、プシュッと音を立てて開けられた桃井くんのコーラを見遣る。


無数に浮かぶ炭酸の泡。持ち上げられたペットボトルを目で追うと、改めて桃井くんの背の高さに驚いた。


ただコーラを飲むその姿に、無性にドキドキするのはどうしてだろう。


「……買わないの」

「え! あ、買います! うんっ!」


どんだけ凝視してんだあたしはっ!


急いでボタンを連打して、ペットボトル2本と缶コーヒーを取り出して振り向くと、桃井くんが……多分、驚いていた。


「あ、コレね、友達の分。じゃんけんで負けたんだ」

「ああ……ひとりで飲むのかと思った」

「そんなわけないじゃん!」


「だね」と言って背を向けて歩き出した桃井くんに、ハッとする。


そうだ、桃井くんにとったら当たり前なことじゃないんだよね。


……桃井くんって、なんで友達がいないんだろう。他校に悪い友達がいるようには見えないんだけどな。


やっぱり近付きにくいってだけで、噂がひとり歩きしてる気がする。


それを突っ込む勇気はまだないんだけれども……。
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