それでも君と、はじめての恋を
「桃井くんっ」
背中を追い掛けて、あたしは桃井くんの隣に並ぶ。見上げると、何?という顔。
「じゃんけんしよう!」
自分でも、何でこんな提案をしたか分からない。桃井くんはきっと、もっと意味が分からないだろうな。
案の定、桃井くんは眉を寄せて不思議そうな顔をする。
「なんで」
「んー……。あ! 今度、自販機の前で会ったら、今負けたほうが相手の飲み物をおごるってどう?」
これなら、じゃんけんできるよね。それに、あたしと葵と純でやったことを桃井くんともやりたい。
吹き抜ける風と舞う雪が、あたしと桃井くんの間を通り抜ける。
桃井くんはあたしを見下ろして拳を差し出した。その様子を見て、にんまりと口の端を上げる。
「じゃあいくよー。じゃーんけん、ぽん!」
「……」
あたしが出したのは、さっき負けたばかりのチョキ。桃井くんは開いた手をジッと見つめている。
ジワッと湧き上がる熱いものにあたしは声を上げた。