それでも君と、はじめての恋を


「知らなくて済むなら、それが1番いいって。……池田は、池田なりに気遣ってた」

「だからモモは、あんな態度だったんだね……」


純は純なりに、ちゃんと葵のことを考えてるんだって、モモは分かってたから。


モモは純の気持ちに同意しただけ。その気持ちは優しさだと思っただけ。


黙っていたことにあたしが怒ったのは、どうでもいいと思われてるんだって感じていたから。


違うじゃん。ふたりとも、めちゃくちゃ考えてた。


「あたしが葵の味方だったように、モモは、純の味方だったんだね」


モモは、優しいから。最初は葵に話したほうがいいんじゃないかって、思ってたんだね。


だけど純の考えを聞いて、それが1番いいのかもしれないって。純と黙っていようって決めたんだね。


……何も考えてないのかと思ってた。


「あたし、超最悪」

「え」

「……え?」


驚いて隣のモモを見ると、何でそんな反応をするんだろうと思うくらい不思議そうな顔をしていた。


「……だってあたし、めちゃくちゃ勘違いしてたじゃん」

「……や、それは別に、いい……っていうか」


首裏を掻いて眉を寄せるモモは、何て言えばいいのか分からない様子。


「……黙ってたことは、悪いと思ってなかった。けど、渉があんなに怒るとも思ってなくて……」

「……」

「俺らがどういう理由で黙ってたか知って、今、どう思ってる?」


どうって……。勘違いして、怒って、避けて、あたし最悪じゃんって……思ってる、けど。


「怒ってない。でも、純とモモが黙ってた理由を知っても、やっぱり話してほしかったって思う」

「……そうだろうなって、思った。だから、渉があんなに怒ったのも分かるし、黙ってたのは間違ってたかもって思う」


……だから、あたしの家に来てくれたの? 考えて、自分も悪かったって、思ったから?
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