それでも君と、はじめての恋を


「葵のこと、どうでもいいって、思ってはなかった?」

「……思ってなかった」

「干渉しようと思わなかったのは、何で?」

「……池田が殴られたこともあったし、男が出ても、優木の彼氏は不快かと」


最初から、そう聞けば良かった。


純に殴られたことは言うなって言われてたから、話せなかったんだろうけど。


もっとちゃんと落ち着いて話を聞いていれば、あんなことにならなかったのかもしれない。なんて、今更だけど。


見守る難しさと、支える難しさは同等なのかもしれない。



「本当は、葵に話を聞いたり、励ましたりしたかった?」

「……まあ、うん。……池田はずっと、気にかけてた」


モモだって気にかけてたくせに、池田池田って……。一体いつの間に、そんなに仲良くなったのよ。


ずるずるとベッドに寄り掛からせていた背中が下がっていく。


その内寄り掛からせているのは肩甲骨だけになって、ダラしない体勢のあたしをモモは黙って見ていた。


ぽす、とベッドのふちに後頭部を乗せたあたしは天井を暫く眺めて、横を向く。


目が合ったモモは無表情で、やっぱり目つきが悪いなって思った。



「――ごめん」


また先に、謝られてしまった。


「何か、全然うまく話せなかったけど……ごめん」

「……」

「あと、今日も……言い過ぎて、ごめん」


ジッと見つめていると、モモの無表情が段々と崩れてきた。目を逸らして、言葉を探して、また目を合わせて、口を開く。


「い、嫌で……」


その単語に目を見開いたあと、すぐに笑ってしまった。


「嫌で、って……」


込み上げた笑いに、あたしは姿勢を正しながらもベッドに顔を埋めてしまう。


きっとモモは眉を寄せて口を手で覆ったりしてるんだろうけど、嬉しいだけだよ。


「……バカにしてんの」


モモの言葉に顔を上げると、少し不満げな表情が見えた。


「してないよ。久坂さんといた?っていうか、遊んでたのが? 嫌で、あんなに怒ったんでしょ?」

「……」


黙った。それをやめて、ってあたしも怒ったのに、まだ分かってないのかな。
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