それでも君と、はじめての恋を


あたしもひどいことをいっぱい言ったけど、本心だった。


何でって聞いてもモモはちゃんと教えてくれなくて。ハッキリ言わないからあたしが考えるしかなくて。それが嫌で、不満だった。


だけどモモは今、放り出さないでいてくれる。口下手で、やっぱり少し言葉足らずだと思うけど、話す努力をしてくれている。


「――嫌いなんて、嘘」


あの時は嫌いって言ったけど、嘘だよ。


「あたしは悪くないって意地張って……モモがもういいって態度なら、あたしだってもう知らないって、思ってた」


怒ってた。いい加減にしろって思ってた。だけど伝わってほしいことが伝わらなくて、しんどかった。声を荒らげることよりも先に、涙が出てしまいそうだった。


どれだけ悪態をついていても、本当はモモと仲直りしたいって、思っていたから。


「モモの気持ちも知らないで、あんなに怒って、嫌いなんて言って、ごめん」

「……」

「……ごめんね、モモ」


今、自分がどんな顔をしてるのか分からないけど、謝ったあたしにモモは微笑んでくれた。流れるように、緩やかに、優しく。


……良かった。


これで、仲直り?で、いいんだよね。彼氏と喧嘩なんて初めてだから、分かんない――……。


ビクリと大袈裟に肩を揺らしたモモに思考が遮断されると、どこからか携帯のバイブ音が聞こえた。


するとモモがデニムパンツのポケットから携帯を取り出して、暫く画面を見つめたあと、耳に当てた。


……誰だろ。


「――もし、」

『~~っのバカ桃井!!』


あたしにまで聞こえるほどの大声に、モモは勢い良く携帯を耳から離した。


『何で喋っちゃうわけ!? 俺、あれだけ何十回も! 何百回も! 言うなって言ったよな!?』


純……の、声だけど……あれ?


「……ごめん」

『ごめんで済むなら警察いらないって知ってる!? ああ~っもう! まっじでふざけんな! どうしてくれんだよっ!』


ボリュームが下がらない純の声に、モモは携帯を耳に当てないまま画面を見つめて話し掛けていた。
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