それでも君と、はじめての恋を


「……モモ」

「……」

「ちょっと、こっち向いて」


あたしはベッドを横に座り直して、モモにも体勢を変えるようジェスチャーでも伝えた。


素直にあたしと向かい合うように座り直してくれたモモへ、さらに注文をする。


「そう、それで、もうちょい前に来て」


ちょいちょいと手招きをすれば、モモは何で?と顔に出しながらも距離を詰めてくれた。


「……」
「……」

うん、よし。

あたしは正座だけどモモがあぐらを掻いてくれているおかげで、だいぶ助かった。その手が後ろにあればもっと助かる。


カーペットに落としていた視線を上げると、モモはぴくりと反応する。

ジッと見つめられても意味が分からないだろうけど、『せーの』でいくので、よろしくお願いします。


「何――……っ!?」


抱き付こうとしたあたしにモモは素晴らしい反射神経を見せて、後ろに仰け反る。


そのまま後ろに転ぶんじゃないかと思ったけど、モモの腰に回した腕は床にぶつかることはなかった。


モモは仰け反らせた自分の体を、後ろに置いた手で支えている。いつの間にかあぐらまでやめていた。


おかげであたしはぴったりとモモに抱き付けたわけだけど。


「……何、急に」


また同じこと言われた。知りたい?って聞いても、「うん」なんて言わないくせに。


「――1、何となく。2、仲直りのハグ。3、モモにぎゅってされたい」

「……」

「どれでしょう」


モモの胸を借りていたあたしは顔を横に向けて、返答を待った。その間にもぞもぞと動いて更に距離を縮めてみても、モモは身動きひとつする気配がない。


何、って聞いたのはモモなのに。せっかく三択から選べるんだから、答えてよ。


あと10秒以内に答えなかったら。


「全部……?」


……力の限り、抱きしめてやろうと思ったのに。
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