それでも君と、はじめての恋を
「当たり」
何となく抱き付きたかった。仲直りのハグなんてものをしてみたかった。だからモモにも、ぎゅってしてほいなって思った。
「……」
「……当たりだよ?」
もう一度言うと、モモの右手がためらいがちに背中に触れる。体勢を整えたモモの右手が、するり。腰に下がる。ゆっくりと頭を下げたモモは、あたしの首筋に顔をうずめた。
モモの左手があたしの肩を抱き寄せれば、心音と温もりが混ざり合う。
――良かった。
ただただひたすらに、とても単純に、そう思った。
「……、」
抱かれていた肩からモモの手が離れると、くっ付いていたふたりの間に隙間ができる。だけどモモの左手はいつの間にかあたしの髪に触れていたし、至近距離でお互いを見つめていた。
自然と瞼を下げたらきっと、触れる。
「お邪魔しまーっす!」
「……」
「……」
「――あー……っと、うん。まじでお邪魔した自覚はある」
トレイに載った3人分のドリンクを片手に、部屋へ入ってきたおにぃを見るあたしの目は憎悪に溢れているに違いない。
「~っなんっなの!? ノックしてっていつも言ってるじゃん!!」
テーブルに置いてあった化粧水のボトルを力任せにおにぃへ投げつけると、ガンッ!と惜しくも壁にぶつかる。
「悪かったって! ごめんって!」
「うるさいバカ! 何の用!? 出てけ!」
「だって帰ってきたら知らん男の靴あるし! モモ来てんじゃね!?ってなるだろ!?」
「だからって普通ノックもしないで入ってくる!? 最っ低!」
クッションも投げ付けると、おにぃは難なく片手で受け止めて、「ナイスコントロール!」なんてふざけるのも大概にしてほしい。
最悪……最低……林間学校の時といい、また邪魔が入った……。
「あたしは一生モモのリベンジを受けられないんだ……」
「ちょ、何言って……」
「だってそうじゃん! モモも何か言ってやってよ!」
ええ……とでも言いそうなモモは困った顔をして、物凄く気まずそうにおにぃへ視線を向けた。