それでも君と、はじめての恋を
「……何ソレ」
気絶しそう。胸の奥が締め上げられるような感覚が、苦しくて。
モモは自分が何を言ったか理解してるのか、あたしを視界から追い出していた。
ゆるやかな歩調には不釣り合いなほど、心の底から急速に愛しさが込み上げる。
……ああ、もう。何なの、急に。自分で言っといて恥ずかしがらないでよ。あたしまで恥ずかしくなるじゃん。
嬉しいのに、もう1回言ってとお願いしたいのに、真っ赤になってる顔を見られたくなくて、言えないじゃん。
繋がれた手から、あたしの速まる鼓動と高まる熱までモモに伝わってしまうかもしれない。
「だから……っていうか」
え。まだ続くの……?
地面に落としていた視線を上げることが出来ないまま、モモが言おうとしてることを考えた。
「あんまり、妬かせんな」
「――……」
驚きのあまり自分の顔が赤いことを忘れてモモを見上げてしまった。そのことに気付いたのは、モモがあたしを映す鏡そのものになっていたから。
……だから自分で言っといて、赤くならないでってば……。
「――イタッ」
「コンビニ寄ってくる……」
ベシンと額を叩かれたかと思ったら、モモは逃げるようにコンビニへ入っていく。
残されたあたしはと言うと、暫くポカーンとしてから、よろよろとコンビニの外に設置されたベンチへ向かった。
なんっだったんだ今のは……!!
腰が砕けたようにベンチへ倒れ込むと、あたしの両脚はジタバタと行き場のない感情を代わりに発散してくれる。
モモが……あの、モモが……あんまり妬かせんな!? 何ソレあたしのこと殺す気か!
一体どういうことなの。何で急にそんな……どこで覚えたのそんな言葉!
……純か。まさか純がモモにあれこれと仕込んでるのか。そうじゃなきゃモモがあんなに高度な台詞を言えわけがない。言ったあとに真っ赤になるわけがない。逃げるのはいつものことだけど。
「ああ、もう……」
心臓がもたないからやめてほしい。モモだって、恥ずかしくなるくらいなら無理に頑張らなくていいのに。
だけど……そう、だけど。
無愛想なモモの表情が崩れた途端、胸が躍るんだ。いつも、いつも、今だって。やめてほしいと思いながら、ジワジワと別の感情が顔を出してくる。
血が騒いで、心が弾んで、言いようのない中毒的な喜びに支配されてしまう。もっと見たいって、もっと見せてほしいって、思ってしまう。