それでも君と、はじめての恋を
あたしの足元にしゃがみ込んで、チョコプレートを食べ終わるまでモモは無表情だったけれど。
「……ごちそうさま」
気恥しさを含んだ瞳を見れたから、十分だった。
「あ、ウェットティッシュ持ってるよ」
モモが手についたチョコレートを舐め取り、あたしはバッグの中からウェットティッシュを1枚取り出して差し出す。モモが手を拭き終わるのを見届ければ、次の行動は決まっていた。
「あとね、そんな、大した物じゃないんだけど……」
「……」
「プ、プレゼント……」
チョコプレートだけで終わるはずがないのに、モモは小さい藍色の紙袋に目を見開く。
「あげる」
ズイッとより近くに差し出すとモモは躊躇いがちに紙袋を受け取って、眺めた。
モモが袋の中から取りだしたのは、電車の定期券よりも一回り大きいミルク色の箱。ピンク色の細いリボンが十字に巻かれて角で蝶々結びされているけれど、中身は可愛いわけじゃない。
「……開けていい?」
「え。い、いいけど……ほんと大した物じゃ……」
言ってるそばからリボンを解いて箱の上蓋を開けたモモに、心の中で悲鳴を上げる。
ああ……今まさに、手作りのお弁当を食べてもらった時と同じ心境。
箱の中に入っていたのは、アイアゲートという黒に白い縞が入ったパワーストーンのブレスレット。濃いピンク色のマーブル模様になっているピーモンタイト・シストという石も3つだけ使ってる。
「……えっと、その黒いのは開運とか、強力な魔除けなんだって」
まあ、モモは存在自体が魔除けみたいなものでしょうけど……。
「ピンクの方は、魅力を高めるとか色々で……モモ、よくブレスレット付けてるし、レザーとストーンものが多いから合うかと思って、紐編みにしてもらったんだけど……あ、付けようか……っ」
説明してる間にモモがブレスレットをはめようとしてくれたけど、付け方が分からないらしく慌てて腕を伸ばした。
「あのね、この端と端の石を持って、引っ張るんだって。そしたら手首に通して……今度は紐端を押さえて、もう片方の紐端を引っ張れば……」
こんなプレゼントで大丈夫だったかな、とか。気に入ってくれたかな、とか。そんなことを考えながらモモの手首にブレスレットを付けるあたしの手は微かに震えていた。
何とか無事に付け終わり手を引っ込めると、モモはジッと手首にはめられたパワーストーンのブレスレットに視線を落とす。
その間のあたしはハラハラとドキドキが一緒に襲って、気付けば服の上から心臓のあたりを握り締めていた。
顔を上げたモモにバクッと大きく鼓動が跳ねたかと思えば、新しい表情に目を奪われる。