それでも君と、はじめての恋を
「ありがとう……」
例えるなら、真顔と笑顔の中間だった。
少し眉を下げて口の端も上がっていなかったけれど、細められた瞳が感謝そのものを滲ませているようで。とびきりの笑顔で言われるよりも、「ありがとう」という言葉が心に真っ直ぐ、ストンと落ちた気がした。
だからあたしの頬は自然と緩んで、モモに微笑むことが出来たんだ。
……良かった。喧嘩しちゃって、記念日を祝えなかったから……半年経っても変わらない想いを伝えられて、モモを考えて選んだプレゼントを渡せて、良かった。
「――え……?」
ただモモを見つめていたあたしの目の前に突如現れた、ベロア調の巾着袋。
「……え?」
「……プレゼント」
そんなことは聞かなくてもすでに気付いていたけれど、まさかモモまで持ってきているとは思ってなくて驚く他なかった。
ドキドキしながら受け取ると、少し重いキャメル色の袋は手の平ほどの大きさで、掠れた黒で印刷された店名には覚えがある。
「モモが好きな店のやつ……」
「店長がまたおいでとか言ってた」
……行く。絶対行く。この袋に入ってるものを身に付けて、モモの前で店長に自慢しまくる。
縛られた紐を解くと、モモは2ヵ月記念日の時と同じように首裏を押さえて地面に視線を落とした。
変わってるようで変わってないね、モモ。
袋の中身を手の平に落とすと、出てきたのはハートとアラベスクが交わるように刻印されたシルバーバングルだった。
幅1センチあるかないかのバングルは存在感があって、手首を華やかに見せそう。
た、高そう……それに何か、どこかで……。
「――ッモモのやつと似てる!」
どこかで見た覚えのあるデザインだと思ったら、そうだ。レザーものが多いモモが唯一着けるシルバーバングルと似てるんだ。
地面にしゃがみ込んで、自分の膝に頬杖をつくモモの手首には思った通りの輝きがある。そしてあたしを見上げるモモが手で口を覆って、眉を寄せて見上げてきたとなれば、確信するしかなかった。
「おそろい!」
「違う」
1秒もせず否定してきたモモに、あたしはバングルを腕にはめて前に突き出す。
「じゃあモモのやつ見せてよ。隣に並べて」
「…………」
「モモ」
渋々とバングルを付けた手首をあたしの手首の隣に伸ばしたモモに、口の端が上がる。