それでも君と、はじめての恋を
モモの手首にさりげなく着けられた、あたしの物よりも細めのバングル。幅こそ違えど、施されたデザインは同じアラベスクだった。
「モモのはハートがないね」
「……それは、そうでしょ」
「おそろい」
「……」
全く同じものよりも、男女で少しデザインが異なる方がペアっぽく見えない? あたしだけ?
ニコニコと笑顔を絶やさないあたしからモモは視線を逸らして、まだ否定したいらしい。
「……意識したわけじゃない」
「じゃあ無意識で自分と同じような物選んだってことだね!」
「……」
何を言っても墓穴になると悟ったのか、モモは口を噤んだ。
意識していても、していなくても、結局嬉しいと思うあたしの思考はだいぶめでたいと思う。それでも、溢れる嬉しさは押さえきれなくて。あたしと同じようにプレゼントを用意してくれていたモモに、笑顔が零れる。
「嬉しい。ありがとう、モモ」
「……うん」
「もうすぐ7ヵ月だね」
「……ん」
「モモが作ったお弁当食べたい」
「――ッ!」
前も吹き出してたけど、何がそんなに面白いんだろう。
暫く俯いていたモモは笑い終わったのか顔を上げたけれど、まだ少し笑みが残っていた。
「そんなんでいいの」
「あたしにとってはビッグイベントなんだけど」
それに、半年記念日用に奮発しちゃったのはお互いさまでしょ? 次に奮発するのは1年記念日……なんて、まだ先だけどさ。
「8ヵ月はどうするの」
そう聞いてくれる君と、ずっと一緒にいたいよ。
「モモが決めて。7ヵ月記念日はあたしのリクエスト、モモのお弁当ね」
ベンチの背もたれに寄り掛かると、モモは考えるように眉を寄せて、未来を想う。
……モモが想う先にあたしがいるって、どれだけ幸せなことだろう。
1分先も、1ヵ月後も、1年後も、モモといたいと思えるこの気持ちを持てたことは、どれだけの奇跡なんだろう。