それでも君と、はじめての恋を
モモはかっこいい。
背も高くて、体つきも男らしくて、髪色はちょっと奇抜だけど、小さい顔にかかるピンク色の髪はすごく好き。
切れ長の瞳は少しつり目がちで、射抜くような視線に他の人は委縮するかもしれない。無愛想で口数も少ないけど、そこにいるだけで存在感がある。
他の人にとっては分からないけれど、あたしにとってモモのそれは魅力だった。
出逢ってから、言葉を交わすようになってから、惹かれるほどの魅力になった。
モモは噂とは違う人なんだよ、って知ってほしかった時期は確かにあったのに。葵や純や森くんだってモモと普通に喋るのに、それ以外の人は嫌だ、なんて。
モモの本当の姿はあたししか知らない、って独占欲にも似た感情を抱いてた。
実際モモが他の人とも友達になりたいと思っていたら、ダメなんて言う権利も邪魔する権利もあたしにはない。
あたし以外の誰かがモモを好きになるのも、モモがあたし以外の誰かを好きになるのも、自由。
……じゃあ、あたしがヤキモチを妬くのも、自由?
「そんな心配なら本人に聞けばいいと思うよー」
「え」
「ほらほら」
「え!?」
森くんに腕を引っ張られたことでよろりと一歩踏み出すと、そのまま強引にモモのところまで連れて行かれる。
ちょっと待って! そんな急に言われても……! ていうか飲み物買いに行ってた葵と純まで戻ってきてるじゃん!
「はい、へんぴーん」
返品って!
トン、と森くんに背を押されて、あたしは椅子に腰掛けているモモの近くに立たされた。
うわぁ……めっちゃ見られてる……。
「何か、渉ちゃん心配事があるらしいよ?」
「森くんっ!」
「あはは」
笑って誤魔化す森くんはモモが座る机に浅く腰掛けて、「大丈夫だよ」と無責任なことを言う。
「桃井も聞きたいだろ?」
「……何の話」
椅子にもたれて森くんを見上げるモモと、見返す森くんはどこからどう見ても友達だった。
……そういえばモモと森くんは1年生の時もクラスメイトだったんだよね。席も前後で……って、今モモに告白した時のこと思い出してる場合じゃないんだけど。
あの時に森くんがモモの背中を押していなかったら、あたしは曇りガラスにつづられた告白を見られなかったかも、なんて。