それでも君と、はじめての恋を
「……話が全く見えないんだけどぉ~、つまり渉が桃井に物申す!ってことぉ?」
「何それ超見たい。渉頑張れ」
純と葵に口をへの字に曲げても、ふたりは楽しそうに目を輝かせることをやめない。
他人事だと思って……!
「……何」
モモにまで尋ねられて、他に3人分の視線を浴びてしまっては逃げ場なんてなかった。
今逃げても、あとでまた聞かれるに決まってる。何より、本当に3年生の間でモモが話題に上がっているなら、この先もきっとあたしは微妙な気持ちになるんだと思う。
モモに話し掛ける女の子が増えたら。モモを好きになる女の子が出てきたら。モモが、あたしじゃない子に笑顔を向けたら。
きっとその度、モモを独り占めしたいって思う。
「……さっきの、女の先輩、誰?」
「…………」
面食らったように、少し目を見張ったモモにさっそく後悔してしまった。
ああ……言っちゃったよ。あたし心狭い。モモなんかヤキモチだって分かってるのかも微妙。それが何?とか思ってそう。
「――ぶはっ!」
「笑うな純」
純をたしなめた葵の声にも笑いが含まれていたけど、あたしは一瞬ふたりを見遣っただけで、またすぐにモモへ視線を戻す。
モモは極力あたしと目を合わせつつも、純か葵を見たり森くんを見たりと、どこか困ってるようだった。
「……さっきって、さっき?」
「うん」
ひとりだけ立っている状況だと、心細い。お腹の前で両手を組んで何とか持ちこたえていると、モモは首裏を掻いてぽつりと言葉を零した。
「池田に伝言頼まれた」
「……」
――え? ……え、何、で、伝言?
「先輩が桃井なんか狙うわけないじゃぁ~ん。あの人は俺のだよ?」
「純のどや顔ほんとキモイ」
新しい情報を頭に入れながら、頬が徐々に熱くなっていく。
……じゃ、じゃあ、あの綺麗な先輩は、モモに用があったわけじゃないってこと?