それでも君と、はじめての恋を
葵に言われて、純はつまらなさそうに「だからぁ」と返して森くんに再現を頼む。
「桃井くんもおいでよー」
完全に棒読みの森くんが純の腕に触れると、純は勢い良く森くんの手を振り払った。
「このあからさまな拒絶! すごくなぁ~い? しかも超怖い顔して睨むしさぁ、先輩めちゃくちゃ怯えて逃げたからね」
「今、嘘でも傷付いたわ……」
「でっしょぉ!? もうホント桃井有り得ない。女の子には優しくしなきゃ、って心がないよねぇ~」
……そんなことが、あったの? ほんとに? 嘘じゃなくて?
「……俺そんな、ひどかった?」
「出たよこの無自覚! 話し掛けてみようかな~って女の子は出て来るかもしれないけどぉ、ちょ~っと触られただけであんな反応してたら益々避けられるねっ! 俺でさえ怖かったもん」
腕を振り払われた先輩も、その時一緒にいた先輩も、モモには二度と話し掛けないと言ったらしい。何で純は一緒にいて平気なの、とまで。
……何か、あたしがモモと初めて二人きりになった時と似てる。モモに言ったことはないけど、あたしも本気で殺されるって思ったもんな……。
「でも何でそんなに拒絶したわけ? 女が苦手ってわけでもなさそうだけど」
会話に参加しないまま黙々とお弁当を食べ進めていると、葵が不思議そうにモモへ問う。
「苦手っていうか……」
ちらりと視線を向けると、モモは考えるように眉を寄せていた。
「……渉と違う?」
「……」
何で疑問系……いや、そんなことより、そんな理由? そりゃ、あたしはひとりしかいないんだし、違って当たり前だと思うんだけど……。
「えーっと……つまり、渉ちゃんじゃない人に触られて嫌だったから、振り払ったってこと?」
森くんの言葉に何であたしはまた、顔を赤くしてるんだろう。
「まあ……そうなる」
「「「「……」」」」
自分で何を言ってるのか、分かってない。
モモの言い方は、あたし以外には触られたくないって言ってるようなものじゃん。あたし以外は受け付けないんだって、他の人じゃダメなんだって、思っちゃうじゃん。
どうしてくれるの、この赤い顔。