それでも君と、はじめての恋を
「……」
修学旅行が終わったら、クリスマス。クリスマスが終わったらあたしの誕生日があったりするけど、それは置いといて。
バレンタインが来れば、モモとあたしは付き合って1年を迎えるんだ。迎えられるかな。それまで仲良くしていられるかな。
初めて喧嘩をした時、思いもしなかった感情や言葉が出たように。これから先、あたしとモモの間には予想し得なかった出来事が起こるかもしれない。すれ違って、離れてしまう時も来るのかもしれない。
だけど逃げずに、面倒くさがらずに、諦めずに、その時抱える気持ちに真正面から向き合える自分でいたい。
あたしには恋愛経験なんてこれっぽちもなくて、今でさえ経験と呼べるようなことはしていないと思うけど、胸を張ってモモが好きだと言える。
経験が全てじゃないって思うから。逆に経験を知らないあたしだからこそ、素直でいることが1番だって思うんだ。
欲を言えば、これから先は今よりもうちょっと進展してくれればいいな……なんて思ったり。
ちらりと斜め横を見遣ると、長い脚を少し曲げて机に腰掛けるモモは真っ直ぐ前だけを見ていた。手に持つストレートティーは、ぴくりとも動かない。
……何を考えているんだろう。眠い、とか。疲れた、とか。今日の夕飯どうしよう、とか?
湊ちゃんのことを考えてるのかもしれない。もしかしたら何も考えてなくて、ぼーっとしてるだけかも。
……あたしはモモのことばっか考えてるっていうのに、呑気すぎる。いや、本当は何を考えてるかなんて知らないんだけどさ。
「モモだもんなぁ……」
しょうがないよね、うん。ゆっくりいこう。
ふぅ、と哀愁漂う溜め息をつくと、「俺が何」とモモの声。
「……ん?」
「俺だもんな、って何」
「……え、あれ。声に出してた?」
「出てた」
なんてこった。
「なんでもないよ」
前はそう言えば納得がいかない表情を浮かべはしても、それ以上突っ込んでくることはなかったのになぁ……。
ジッと見つめてくるモモに観念して、目を逸らした。
「モモはさっき、何を考えてたのかなって」
「……」
「あたしのこと考えてるといいなって思ったけど、モモのことだから、ぼーっとしてただけだろうなって」
言った後になんだけど、何気に失礼だな、あたし。
でも間違ってないと、モモの沈黙が言ってくれてるような気がした。