それでも君と、はじめての恋を


「当たり?」


頬杖をついた顔を向けると、モモは床に視線を落として「あー……」とまだ考えているような返答。


するとモモは少し体を捻って、持っていたジュースを机に置いた。


「……はずれ」


ギッ、と机が軋んだのは、モモが机に置く片腕で体を支えたから。


椅子に座るあたしの顔を覗くように、体を傾けたモモの表情は二度見た覚えがあった。


うまく説明出来ないけど、その表情を見ると胸の奥がそっと柔く圧迫されて、苦しくなる。


それが多分、合図だった。


気持ち程度に顔を上に向けるあたしは、まるでモモに操られているみたい。だけど目を伏せた時、何でかすごく、モモと気持ちが通じたように感じた。


触れたと言えばいいのか、重なったと言えばいいのか。そんなことも分からないまま、モモの唇はゆっくりとあたしの唇から離れていく。


「――……」


睫毛をはためかせて視線を上げれば、切れ長の瞳と目が合った。


――う、わ……。


ドキリと胸が高鳴って、じわじわと体温が上がっていく感覚に両手で口を覆う。そのまま机に肘をついて、赤くなる顔を両手で隠した。


……やばい。何これ。どうしよう。


微かに震えた唇にはまるで名残が残っているようで、嗅ぎ慣れたモモの香水はどこまでも心拍数を上げる。


――どうしよう。ドキドキし過ぎて死ぬかもしれない。


まさか今、このタイミングで、この場所で、リベンジされるとは思わなかった。


ずるい。こんな急に、そんな不意打ちでキスしてくるなんて、ずるい。


好きすぎてどうにかなってしまいそう。たったそれだけの気持ちで、涙が出るなんて知らなかった。


「――好き」


まだ熱い顔も乾かない涙目も見せたくなくて、両手で顔を覆ったまま呟いたあたしの声は少しくぐもってる。それでも繰り返した。


「好き」


胸のど真ん中にある想いを確認するように。


口にしても溢れ続ける想いが伝わるように。
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