それでも君と、はじめての恋を
「だから、そんなんじゃな……」
「はい謙遜しなーい! この前教えてもらったこと実践したら、うまくいったからね!」
再び最後まで言わせてもらえないことに怒れなかったのは、“うまくいった”と聞いてしまったから。
片思いしていた友達の恋の進展に、他の子もあたしと同じように驚いていた。
「「「マジで!?」」」
「マジで! 来週ふたりで遊びに行くんだー!」
「ぎゃー!」っと、その場にいた全員が盛り上がるのはよくある光景。
誰かの恋バナで盛り上がって、誰かの恋バナで盛り下がる。
好きな人ができたとか、告白してフラれたとか。どうしようと悩んで、相談して、色んな意見が交わされる。
こんな恋がしたいとか、こんな人と付き合いたいとか。現実であったり、妄想であったり。
それが日常で、当たり前。
「「「渉の出番じゃん!」」」
――矢吹 渉 (やぶき わたる)
高校1年生。恋愛経験、豊富。
どころか、ゼロ。