それでも君と、はじめての恋を
▽痛みは君のせい
桃井くんとの“今度”が果たされないまま、降り積もる雪と近づいてきた学年末テストに、あたしは不機嫌に眉を寄せていた。
「何だ矢吹、そんなに俺の話が嫌か」
「まあ、心の底から早く帰りたいとは思ってます」
放課後の職員室で、あたしを見上げる安部ちゃんを恨めしげに見下ろす。
何で放課後まで勉強の話をされなきゃいけないのか、誰か教えてください。
「あのな矢吹、お前の為を思って呼び出したんだぞ! 見ろこの点数!」
安部ちゃんが怒りながら、先日やった小テストを差し出してきた。その点数に自分自身、ドン引き。
よ、4点て……。この点数じゃさすがに呼び出されますネ。
受け取ったプリントをヒラヒラ揺らしていると、安部ちゃんは眉をつり上げる。
「そんなチャラチャラしてる暇があったら勉強しろ! 勉強!」
「好きな格好してるだけじゃん」
「矢吹っ! お前、学年末でもそんな点数取ったら留年だからな!」
「分ぁかったってばー。しますします、勉強しますー」
より一層眉を寄せたあたしは、盛大な溜め息をついた。ふと目に入った、引きつった笑顔を見せているひとりの先生。
その前に立つのは、桃井くんだった。