それでも君と、はじめての恋を
*
「渉、何か今日可愛い〜! 黒コンしてる?」
「ヘアスプレー何使ってんの? 巻き取れてない!」
4時間目の体育が終わって葵と教室に戻っていると、クラスメイトの女子が話しかけてくる。
あたしはみんなに囲まれながら、瞳を覗かれたり髪を触られながら歩き続ける。
「別にいつもと一緒じゃん!」
「マジで髪! 何使ってんの!」
「VO5に変えたんだよ。巻き落ちないから、買ってみれば?」
あんまり触られると巻きが緩くなるから、早めに答える。コンタクトも聞かれたから教えて、あたしはサイトのURLを友達の携帯に送った。
「相変わらずの質問攻め。お疲れ」
教室に着いてやっと解放されたあたしに、葵は労いの言葉を掛ける。
「本気でそう思ってる?」
「ちょっとだけね。ドンマイだよ」
化粧品の話をするのは嫌いじゃないからいいけどさ……。
小さく溜め息をついてから、椅子に座ってカバンからお弁当を取り出す。その時に一緒に出てしまったものを、慌ててカバンに押し戻した。
恐る恐る葵を見るけど、気付いてないみたい。