それでも君と、はじめての恋を
「めっずらしぃ〜! 渉、昨日勉強でもしてたのぉ?」
「………」
ホッとしたのも束の間。後ろに立っていた純が、あたしのカバンに教科書が入っていたのをバッチリ見ていた。
「何? 渉が勉強?」
「ね〜、ありえないよねぇ」
ガタガタと椅子を引きずってきた純を恨めしげに見ていると、葵があたしのカバンの中を覗く。
「うわ。試験前に勉強する渉なんて初めて見た」
「奇跡だよねぇ〜」
「うるさいっ! 今回は頑張るの!」
そう言うあたしに、めずらしいものでも見るような目付きを向けてくるふたり。あたしは目を合わせないように、弁当のふたを開けた。
「……何かぁ、今日の渉、気合い入ってな~い?」
「いつもと一緒だってば!」
「弁当のふた投げなくてもよくない!?」
「痛い〜」とか言いながら額をさする純に、フンッと顔を逸らして箸を持つ。
可愛くなんて、ない。
気合いなんて、入ってない。
今日は、いつもと一緒。
それなのにどうしてだろう。今日は自分の姿が気になる。何も変わったことなんてないのに。
ただ、今日はいつもと違うことがあると言うなら。
あたしは今日、桃井くんに勉強を教えてもらうだけ。