それでも君と、はじめての恋を


――う、わ!


思わず、進めていた足を止めてしまう。生徒玄関に規則正しく間隔をあけて並ぶ傘立て。


そのひとつに座る、桃井くんの後ろ姿を見つけてしまったから。


「……」


1組、終わるの早かったのかな。

あの桃井くんが、あたしのことを待ってるだなんて。


……きれい。ピンク色の髪が太陽の光に透けて……。


「渉ー! バイバイッ」

「!」


突然の声に慌てて振り向くと、廊下の先に部活へ行くらしいクラスメイトが手を振っていた。


「あ、バイバイッ」


あたしも手を振り返すと、曲がり角に消えていくクラスメイト。


……ビ、ビビった。あたし今、桃井くんに見入って……た。


再び視線を桃井くんに戻すと、きっとクラスメイトの声が届いたんだろう。桃井くんが振り返ってあたしを見ていた。


「あ、えと……」


アレ、この場合なんて言えばいいの? バイバイじゃおかしいよね。今日約束してるんだし……いや、何て言うんだ、マジで。


ここはやっぱり、シンプルに。


「こんにちは!」

「……こんにちは?」


うん、何か、疑問形にさせてしまってごめんなさい。
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