それでも君と、はじめての恋を
「ていうか、あたしより最適な奴がいるじゃん」
……いるっけ?
「葵、渉! どいて~っ!」
「は!?」
突然の人影に驚くと、ガタガタッと音を立てて葵の机の下に身を隠す奴と、「逃げるなんて最低!!」という廊下から響く声に、大体の状況を理解した。
「どこ行ったのよ! ふざけんな超ムカつくっ!」
葵と一緒に、廊下が見える窓を覗く。
ガラス越しに見えたのは、顔を真っ赤にして教室を見渡している綺麗な女の先輩。
あたしと葵は恐る恐る目を逸らして、廊下側に背を向けて座り直した。
その内諦めたのか、先輩は立ち去って行く。
「ガチで死ね!」と暴言を残して。
「「……」」
「……行った?」
ごそごそとダウンジャケットを擦らせながら机の下から出てきたのは、ココアみたいな髪色をしたクラスメイト。