それでも君と、はじめての恋を
問いかけるように見ると、桃井くんは見たことのない表情をしていた。
何だろう……。視線を横にして、少し眉間にシワを寄せて。言うか、言わないか、悩んでる感じだった。
「何?」
気になって口に出して問うと、桃井くんは困ったように頬杖……ではなく、首に手をあててあたしを見た。
ピンク色の髪から覗くつり目がちな瞳が、あたしの胸を中から叩く。
「自販機の前で、会えなかったから」
そう言ってすぐに視線を逸らす桃井くんに、ぎゅっと胸が締め付けられた。
今まで何回も、痛いほどに感じたものと同じ。
“今度、自販機の前で会ったら、今負けたほうが相手の飲み物をおごる”
そんなゲームを、桃井くんとした。
あたしが勝って、桃井くんが負けて。
あたしは“今度”が、楽しみで仕方なかった。
「……ありがとう」
覚えていてくれて。
桃井くんはやっぱり「うん」と言うだけだったけど、あたしは溢れ出した想いを抑えるのに必死だった。