それでも君と、はじめての恋を


「……くっ」


……え?


桃井くんが口に手を当てたかと思うと、聞こえたのは、明るい声だった。


「くくっ……ふ、モモって……っ」

「……」


え? え? わ、笑っ……てる……?


声を出して!?
桃井くんが!?

あの桃井くんが!?


食い入るように見つめるあたしに構わず、桃井くんは手の甲を口元にあてて笑ってる。


そのままあたしを見て目を細めたのは、絶対に幻なんかじゃない。


はぁ、と一息ついた桃井くんはあたしに向かって一言。


「いいよ」


笑った顔が、可愛いと思った。


「ほ、ほんと……?」

「うん」

「電話帳の名前もモモにするよ? これからモモって呼ぶよ? 嫌じゃない?」

「うん」


胸の奥が、焦げ付いたみたいに熱くて。あたしは何でか、涙が出そうになった。


でも同時に、頬が緩むのが分かる。
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