お前じゃない
 某広告代理店の社長である重松剛、四十九歳の別荘であり、毎年社員旅行とは別に、気に入った社員を一週間別荘に招待するのである。

 ここで招待された社員は、出世が決まったも同然だ。
 社長は、気さくで普段は温厚だが、仕事になると厳しく別人の様である。

 毎年別荘に招待されているのは、杉田久美子、三十二歳。

 彼女は秘書であり、社長の愛人だという噂がある。理知的ですらっとしていて、黒髪に眼鏡をかけている。

 今回で三度目の招待を受けたのは、相沢春一二十七歳。

 天然ボケのドジであるが仕事は出来る。みんなからは、【ハル】と呼ばれ親しまれている。
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