背徳の天使
終章
なぁ、窪田…
もしお前が
何十万の命を救う為に、京子の命を奪ったことを少しでも後悔してるなら…
京子の命の重さを
何十万の命のそれと比較して、数で重さを量ったことを少しでも後悔してるなら…
俺をつかんでるその左手を離せ。
今度こそ、何十万、何百万の命ではなく、愛するその女を救うんだ。
そして…
たった一つの命の重さに気付け。
俺はお前が死ぬほど嫌がる言葉をひたすら羅列し、最後は手にしていた銃を、隣の女に向けてこう言った。
「そのお前の右手、離し易くしてやるよ。
お前が手を離して、彼女が死んだんじゃ心苦しいだろ?」