ヒーロー先生
こちらからは僕の立ち位置が死角になっているのだろう。なんてタイミングが良いようで悪いような場面に遭遇してしまったんだと思考は曖昧でピントを合わせないが、職員室へはこの廊下を通過しなければならない。階段を上り遠回りをすれば良いのだが確実にこの目の前の廊下を通る方が近道だ。少し待って2人が動かなかったら遠回りの道を選択しよう。そう決め告白場面を盗み聞きしているのに僅かな申し訳無さを感じながら僕はその死角から身を動かさなかった。
「ごめん」
女子生徒の告白相手の男子はさほど時間を費やせずに返答を述べた。女子の頭が微震し、少し俯き気味になったように見えた。男子生徒の話を聞いていれば告白した女子生徒とは初対面だったらしく、はやはり初対面の人間との交際に抵抗があるらしい。一目惚れかな、と僕は一番簡単な切っ掛けを予想した。
申し訳無さそうに謝罪する男子生徒に目に涙をキープし受け答えする女子生徒。今にも女子生徒の涙が零れ落ちそうで、全くの無関係な僕まで感情移入しどうすることも出来ないが多少の焦りを感じた。
やがて立ち去った男子生徒を目で追いながら立ち竦む女子生徒。僕からは背中しか見えない為に涙が零れたのか零れていないのかは分からなかった。
切ないバッドエンドだなあ、と他人事に感想を抱き見ず知らずを装い女子生徒の横を通過し職員室に足を運ぼうとした。刹那に、何処からか新しいメッセージを乗せた声が耳に通達された。
「盗み聞きとは趣味がよろしくないねぇ」
一瞬、内心、うろたえてから声の発生源を追跡する。が、追跡するまでも無く背後にその人物は居た。
「国立、先生」
居たのか。先程のドラマに見入っていたのか、気配を全く感じなかった。
お馴染みの赤いネクタイにベストを着込み、柔らかい笑顔を表情に選択しながら僕にプリントを差し出す。職員室へ足を運び国立先生のもとへ行く必要が省かれた。本来の目的が達成された今教室に戻る他僕には選択肢が無い。が国立先生はプリントを話さない故にその選択肢は実行に移せなかった。僕が国立先生がプリントを掴み離さない。
「ごめん」
女子生徒の告白相手の男子はさほど時間を費やせずに返答を述べた。女子の頭が微震し、少し俯き気味になったように見えた。男子生徒の話を聞いていれば告白した女子生徒とは初対面だったらしく、はやはり初対面の人間との交際に抵抗があるらしい。一目惚れかな、と僕は一番簡単な切っ掛けを予想した。
申し訳無さそうに謝罪する男子生徒に目に涙をキープし受け答えする女子生徒。今にも女子生徒の涙が零れ落ちそうで、全くの無関係な僕まで感情移入しどうすることも出来ないが多少の焦りを感じた。
やがて立ち去った男子生徒を目で追いながら立ち竦む女子生徒。僕からは背中しか見えない為に涙が零れたのか零れていないのかは分からなかった。
切ないバッドエンドだなあ、と他人事に感想を抱き見ず知らずを装い女子生徒の横を通過し職員室に足を運ぼうとした。刹那に、何処からか新しいメッセージを乗せた声が耳に通達された。
「盗み聞きとは趣味がよろしくないねぇ」
一瞬、内心、うろたえてから声の発生源を追跡する。が、追跡するまでも無く背後にその人物は居た。
「国立、先生」
居たのか。先程のドラマに見入っていたのか、気配を全く感じなかった。
お馴染みの赤いネクタイにベストを着込み、柔らかい笑顔を表情に選択しながら僕にプリントを差し出す。職員室へ足を運び国立先生のもとへ行く必要が省かれた。本来の目的が達成された今教室に戻る他僕には選択肢が無い。が国立先生はプリントを話さない故にその選択肢は実行に移せなかった。僕が国立先生がプリントを掴み離さない。