ヒーロー先生
意図が理解出来ず僕は発言せずに無言。一方の国立先生は笑みを絶やさず僕に発言する。

「協力してあげようじゃないか」

主語の無い発言だが今までの流れからして薄々理解は出来た。だが僕は敢えて疑問符を口にしてしらを切った。協力とは?と。国立先生は更に笑みを深くし唇は下に凸の弧を描かせる。

「実らない恋とは切ないものだよね」

予想が的中し明確に意図が掴める。だからってそれを僕に告知しなくても良いだろう。国立先生が恋のキューピットになりたいのは分かったが僕は国立先生をキューピットには出来ないんだぞ。

「協力頑張って下さい、じゃ手を離してもらえませんか」

応援と希望を短く口にするが現状に変化は無し。僕は軽く眉間に縦皺を刻み国立先生を見据える。国立先生の表情にも変化無しのまま当然のように「勿論君も協力するんだよ」、と全く意図不明なことを発言した。何を言ってるんだ、何がしたいんだこの人は。僕には単純に率直な疑問が浮かび上がる。何故僕が無関係な女子生徒の恋愛成就を応援しなければならないのだという極真っ当な疑問が。そして国立先生自身にもどんなメリットが生まれるのだろうと。馬鹿なお節介か、暇つぶしに人助けが趣味なのか?
国立先生は理解不能な心境に陥ったままの僕に別れの挨拶を告げ、まるでハッピーに見舞われたかのような軽い足取りで僕に背を向け立ち去った。

…何が、何だったっけ?
脳内整理が必要だと何処かのサイレンが鳴っているような気がする。だが深くは追求しないことにする。無かったことにしよう。
昼休み終了まであと17分。僕は駆け足で先生とは反対方向の教室を目指した。
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