きみに見せたいものがある
ぼくには、
お父さんというやつがいません…。
お母さんは、お父さんというやつが、
「ひろあきが、まだ小さいときに死んじゃったの。」
と、言うんだけど、
ななつ上の、ぼくのおねぇちゃんは、
「いつのまにかいなくなった」
と、こっそり、小さい声でぼくに言います。
「じゃあ生きてるの?」
と、聞き返すと、
「さあ?死んでるかも。」
と、言う、おねぇちゃんの言っていることは、
ぼくにはよく分かりません。
だから、お母さんが言うことが本当、ってことに…
………どうでも、
いいんだ。
だって、ぼくは知らないから…。
お母さんの言うお父さんというやつも、
おねぇちゃんの言うお父さんというやつも、
ぼくは知らないから。