虹の都へ
昔のことを思い出しながら、笑って話す瀬名さんを見つめることしかできない。

「いつも虹が先に酔いつぶれて寝ちゃってたの。

まあ、あの頃は虹も若かったから仕方のないことだけど。

寝ている虹の横でお酒を飲むって言うのが、当たり前みたいな感じだったわ」

笑いながら、虹のことを話す瀬名さん。

けどその中に、あたしが知っている虹はいない。

当たり前よね。

大学時代の話なんだもん。

あたしが、虹の大学時代を知ってる訳じゃないもん。

むしろ、何も知らないって言う方が正しい。

「ずいぶんと古い話をしてくれますね」

その声の主に視線を向けると、
「あら、起きてたの?」
< 100 / 295 >

この作品をシェア

pagetop