虹の都へ
熱したフライパンのうえにバターを乗せ、グルグルと回しながら溶かして行く。

「女の子と一緒に暮らしてるから、虹も色づいたと思ったのに」

「色づいたって何すか?」

その言葉に、あたしも反応する。

けど、気づかれないように作業を続けた。

「あら、何にも思わないの?」

不思議そうに瀬名さんが言った。

あたしは聞いていないフリを演じ、オムレツを作る。

「何を思うんすか?」

「ふーん、虹は瑞希ちゃんに対して何にも感じないのね」

「なっ…!」
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