虹の都へ
瀬名さん――彼女の存在を忘れてしまっていた。

「あら、すごくおいしい!

一流のシェフが作ったみたい!」

オムレツを頬張る瀬名さんに、あたしは作り笑顔を見せることしかできない。

バレバレと言ってもいいくらいの、引きつったような笑顔。

その笑顔を振りまいている自分が嫌いになる。

仲良そうに1つのオムレツをわけあって食べている虹と瀬名さん。

その姿は、まるで恋人同士のようだ。

そのオムレツは、あたしが作ったのに…。

心の中でぼやいて、うらめしそうに見ても、2人はあたしに気づかないようだ。

胸が痛くなったのは、あたしの気のせいにしたかった。
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