虹の都へ
「うん、いろいろあって…」

あたしの返事を聞いた柊くんは、クシャリと微笑む。

切れ長の目が、少し垂れる。

「兄貴――雅人って言うんだけどさ、涼子さんと恋人同士なんだ」

瀬名さんの口から出てきたその名前。

柊くんのお兄さんの名前。

そして、虹が言っていた瀬名さんとうまく行っていないと言う彼氏さんの名前。

「あの様子じゃ、またケンカしたらしいな」

フフッと、柊くんは寂しそうに笑った。

「兄貴と涼子さんのケンカはいつものことだけど、今回はひどいみたいだな」

ふうっと、しゃべり疲れたと言うように柊くんは息を吐いた。
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