虹の都へ
柊くん…。

あたしを心配してくれる彼に、また涙が出そうになる。

それでもあたしはこらえると、
「何か、あったよ」

呟くような声で言った。

「柊くんの言う通り、あったよ」

柊くんが驚いたようにあたしを見る。

心配の色を顔に浮かべながら。

「虹――さっき声かけてきたスーツの人なんだけどね、あたしのルームメイトなの。

柊くんのお兄さんと瀬名さんとは、大学時代の先輩と後輩の関係」

そこで話を区切り、柊くんを見る。

「続けて」

あたしの顔を見ながら、柊くんが言った。
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