虹の都へ
その時、視界が狭くなった。

代わりに、温かい胸が目の前にあった。

「それ以上、話さなくてもいいから」

背中に回されるその腕に、力が入る。

あたし、柊くんに抱きしめられてる…?

そう思った時、躰を離された。

柊くんの両手が、あたしの両肩に乗る。

突然のことに、あたしは戸惑った。

けどもっと戸惑ったのは、柊くんの真剣な瞳。

黒いビー玉をそのままはめ込んだような瞳が、あたしを映し出す。

躰から流れる真剣なオーラに、圧倒されそうになる。

ジッと、恥ずかしくなるくらいにあたしを見つめた後で、柊くんが言った。
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