虹の都へ
声を出したくても、喉が何かにふさがれたように出てこない。

肌に感じるシャワーの雨。

濡れた髪が頬にくっついて気持ち悪い。

虹は目をそらすこともしなければ、ドアを閉めようともしない。

ただ、黙ってあたしを見てるだけ。

「……虹?」

黙っていることが怖くて、虹の名前を呼んだ。

呟くように呼んだのに、響く声。

その声に反応したと言うように、虹はあたしから目をそらした。

バタン…

バスルームのドアが閉まった。

それにホッとしている自分とガッカリしている自分がいた。

ガッカリって…あたしは、一体何を期待していたのだろうか?
< 150 / 295 >

この作品をシェア

pagetop