虹の都へ
この姿に、虹があたしに欲情してくれると思ってた?

虹があたしを抱いてくれると思ってた?

瀬名さんじゃなくて、あたしを見てくれると思ってた?

「――そんな訳なんて、ないのに…」

自分で呟いたら、胸が苦しくなった。

虹には瀬名さんがいて、あたしには健人がいる。

そのうえ虹は、あたしが知らない時からずっと瀬名さんを見てた。

瀬名さんを、ずっと思ってた。

虹があたしを抱いてくれる訳ないじゃない。

あたしを見てくれる訳ないじゃない。

あたしを選んでくれる訳ないじゃない。

自分自身に言い聞かせれば言い聞かせるほど、だんだんと虚しくなってきた。

自分が情けなくて、嫌悪すらも感じた。
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