虹の都へ
「やっぱり、俺じゃ虹さんの代わりはできなかったみたいだな」

健人が言った。

悲しそうな顔を浮かべながら。

えっ?

「自分では瑞希――高橋の役割を務めているつもりでも、やっぱりダメだった。

高橋の心には、虹さんがいつも居座っていたから」

ふうっとため息をつき、健人は前髪をかきあげた。

「さっき涼子さんを殴ったのだって、虹さんを思ってだったんだろ?」

健人の問いに、あたしは首を縦に振ってうなずいた。

「虹が浮気されたのが、かわいそうだったから…」

自分で言ってみれば、言い訳にしか聞こえない。
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