虹の都へ
あたしも話しかけない。

話すと言っても、何を話せばいいの?

…退屈だ。

走る音だけがやけに目立つ車内の中、そう思った。


「――い…。

――おい」

肩を揺らされ、あたしは目を開けた。

いつの間にか、眠っていたらしい。

寝起きの頭でそんなことを思った。

「――ついたの…?」

座って寝たと言うこともあり、躰が痛い。

「ついた」

虹の言葉に、あたしは何気なく目の前の景色に視線を向けた。

そのとたん、あたしは言葉を発することを忘れた。
< 182 / 295 >

この作品をシェア

pagetop