虹の都へ
線香の匂いが立ち込める小さな部屋。

その部屋にいるのは、あたしと虹の2人だけだった。

事実を知らされたその翌日、お母さんは死んだ。

交通事故だった。

大型トラックにはねられた。

即死だった。

「――お母さん…」

遺影の中のお母さんは、笑っていた。

あたしを1人で育ててくれたお母さん。

毎日毎日働きづめで、つらかっただろうに。

そんなことを思いながら、あたしは涙を流した。
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