虹の都へ
「――瑞希…」

喪服を着た虹が、あたしの名前を呼んだ。

今目の前にいる人は、彼氏じゃない。

あたしのお兄ちゃん。

あたしたちは、兄妹なのだから。

「ねえ、虹」

あたしは、虹に言った。

「別れよう」

虹が驚いたように目を見開いた。

「嫌いになった訳じゃ、ないんだよ?」

続けるように、あたしは言った。

虹を嫌いになった訳じゃない。

むしろ、虹を愛している。
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