虹の都へ
「じゃ、またな」

虹が言った。

「うん、じゃあね」

「ベッドと机は、送っておくから」

「うん、わかった」

キャリーバッグを持つと、あたしは虹に背中を見せた。

8月の終わり、お母さんの葬式から1週間経った日だった。

あたしは、『Rainbow Capital』を出た。

虹と住んでいた家。

別れたのに、一緒に住むのはおかしいからあたしは家を出た。

振り返らないのは、虹への思いを断ち切るため。

振り返ってしまったら、虹への思いがあふれてしまうから。
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