虹の都へ
キチンと着こなしたスーツは相変わらずだと思った。

髪には年齢(トシ)のせいなのか、白髪が混じっていた。

「――虹の…」

虹のお父さんだった。

虹のお父さんはお母さんの仏壇の前に座ると、手をあわせた。

小さな背中。

その背中を、あたしは部屋の隅に座って見ていた。

あたしのお父さん。

死んだと思っていた、あたしのお父さん。

そして、虹のお父さん。

虹のお父さんは振り返って、あたしを見た。

「こんな時に、すまなかった」

あたしを見るなり、お父さんが呟くように言った。
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