虹の都へ
「虹は、僕の友人――大原の子供なんだ」

大原――その名前には、聞き覚えがあった。

確かそれは、虹が会社で名乗っていた名字だ。

「大原夫妻は、虹が5歳の頃に交通事故で亡くなった。

1人になった彼をひきとったのは、友人である僕だった」

虹のお父さんの口から語られる、虹の出生。

「その当時の僕は、可南子さんと結婚していて瑞希を授かっていた。

でもお母さんは、僕が虹をひきとることに反対していた。

自分の子供でも大変なのに、友人の子供を育てるのは、彼女にとってつらかったと思う」

昔のことを思い出したのか、虹のお父さんは目を伏せた。

「僕は自分のことに手がいっぱいで、彼女のことをわかってあげられなかった」
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